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インフルエンサー法務とは|インフルエンサーが遭遇する法律トラブルと弁護士の関わり|

インフルエンサーという存在

昨今、Twitter(本記事投稿時点で「X」と名称変更されています、)やInstagramYouTubeTikTokなどのインターネットメディアや各種SNSにおいて、インフルエンサーと呼ばれる人々が活躍しています。

インフルエンサーというのは、英語の「influence」を語源とした昨今の造語でありますが、世間に対して大きな影響力を与える人物のことを指します(参考リンク先:Wikipedia)。

具体的には、上記の各種SNS等において多くのフォロワーや登録者数を有しており、自らのSNSアカウントや動画チャンネルを利用して企業が発売している商品やテーマパーク、アトラクション、サービス等を紹介したり、スポーツや映画、アニメなどの分析、批評、レビュー、解説をしたりという活動に注力していることが多いものです。

そのほかにも、多くのファンを有していることから、ある種の芸能人やタレントのような活動をしている者も少なくありません。

令和の世になってからより一層、10代・20代の人たちは特にですが、人々が気軽にアクセスできる情報源としてこれらのSNS等が大きな影響力を持ち、テレビを見ないという人でもこれらの媒体には多々触れているという状況が生じてきています。

その一方で、これらのSNS等では誰でも気軽に発信もでき、返信機能やコメント機能、引用機能などが備わっていることから、テレビや新聞がメディアとして圧倒的な地位を築いていた時代には想定されなかったトラブル違法行為が生じるようになりました。

本記事では、インフルエンサーがどのような場面で法務として弁護士の力を借りることが必要とされるのか、という観点から、当事務所でも多くの案件を取り扱っておりますインフルエンサー法務について解説いたします。

インフルエンサーと法律

インフルエンサーには、各種SNSごとに異なった呼び方がつけられているものがあります。

例えば、インスタグラマーYouTuberVTuberTikTokerなどがその典型例ですが、ここではインフルエンサーという媒体を問わない呼称を使わせていただくこととし、どの分野で活躍している人にでも共通して生じる問題点について記載いたします。

インフルエンサーとして活躍する人の収入源は大きく分けて3つであり、1つは利用しているSNSでの広告収益、もう1つは企業から商品やサービスの紹介の対価として金銭を授受するいわゆる企業案件、最後はスーパーチャット等に代表されるいわゆる投げ銭というものです。

これらの収入は誰でも簡単に得られるというものではなく、インフルエンサー各自が自らの才覚を活かしてある程度著名にならなければ得ることのできない類のものとなります。

さて、ではこの収入を得るためにインフルエンサーが活動をするとなると、どのような法律トラブルの発生が考えられるでしょうか。

①事務所所属契約・マネジメント契約

まずは、ある程度インフルエンサーとして活動を進めていくと、ちょうど収益が安定するかどうかというタイミングで様々なインフルエンサー事務所等から声がかかり、事務所に所属することや、事務所にマネジメントを委託することを打診されます。

本記事では、かかる事務所に所属したりマネジメントを委託することの是非はさておき、実際に事務所に所属する場合やマネジメントを委託する場合について解説します。

まず、事務所に所属する場合でもマネジメントを委託する場合でも、基本的にはインフルエンサー事務所等に対してインフルエンサーが自らの売上の一部をマネジメント費用として支払い、案件の管理やSNS・チャンネルの管理、広告の出稿・運用などを事務所に行ってもらうことになります。

その際には、このマネジメント費用の算定方法・支払方法、契約の解除に関する事項、第三者とトラブルになった際の対応方法、著作権や商標権といった知的財産権の帰属・運用に関する事項などを事務所所属契約・専属マネジメント契約という名称の契約によって取り決めます。

そして、この契約に関する契約書は事務所側において用意されることが多く、何らの知識もないまま、事務所側に言われるがままサインをしてしまい、後々お金や権利の所在などについて大きなトラブルを招くことが少なくありません。

特に、お金の面については「また頑張って稼げばいいだろう。」と考えているインフルエンサーがいたとしても、酷い契約の場合、そうはいかないこともあります。

当事務所において過去に担当した案件では、事務所等に所属せずに活動していたとあるVTuberが、ダイレクトメッセージによるスカウトを受けて事務所に所属することとなったところ、そのVTuberとしてのアバター、モデリング、アイコン、キャッチフレーズ等の一切の著作権を事務所に譲渡することとする契約書にサインしてしまい、事務所を退所する場合にはこれまでと同様のVTuberとしての活動ができなくなるという制約が課されてしまった、というものがあります。

これはあくまで一例ですが、YouTuberやインスタグラマーなど、VTuberに限られない多くのインフルエンサーにおいても発生し得るトラブルであり、知的財産権や肖像権、企業から引き続き企業案件を受けられるかどうかといった様々な権利が侵害される危険性が生じます

そして、一部の例外を除き、これらインフルエンサーにとって圧倒的に不利な条項が設けられた契約書にサインをしてしまった場合、後々覆すことは非常に困難となります。

したがって、契約締結の段階で、自らがいかなる状況に置かれようとしているのか、それを同交渉して修正すればいいのかということを把握・理解するべく、事務所所属契約書・専属マネジメント契約書等をしっかりと法律的に理解することが重要となります。

②投稿内容の適法性審査・レピュテーションチェック

インフルエンサーにとって最も恐れるべき事象、それは炎上です。

自分では「これは面白い。」「これはウケるぞ。」と思った投稿や動画であっても、それが法律的に許されない内容のものであったり、社会一般の倫理観に反するものであったりした場合には、フォロワーや登録者、閲覧者、視聴者の中で(悪い意味で)瞬く間に話題となり、その後のインフルエンサー活動に支障を生じることがあります。

これは、単にインフルエンサー自身に法律の知識がないことだけではなく、客観的に自らの投稿や動画を捉えることが困難であることから生じる現象であり、所属事務所やマネージャーがチェックをしてくれるのであれば問題は生じづらいものですが、現実的にそこまでのフォローを求めることは困難です。

したがって、いわゆる「攻めた」内容の投稿や動画をアップロードする場合には、それが法律に反したものでないかという観点からのチェックが必要不可欠となります。

当事務所でも、現にインフルエンサー所属事務所の担当弁護士として、インフルエンサーの投稿や動画を公開前にチェックすることがあります。その中で、表現内容の修正を促したり、適宜モザイク加工を勧めるなどの対応をしております。

③発信者情報開示・削除手続

インフルエンサーとして活動している以上、まず間違いなく100%インターネット上での批評を受けることになります。

それにはファンによる肯定的な意見のみならず、アンチや中立的な立場の者からの誹謗中傷も含まれます。

誹謗中傷の種類としては、インフルエンサーの評価を下げるようなコメントがなされる名誉毀損人格攻撃ともいえる批判がなされる侮辱(名誉感情侵害)個人情報等が晒されるプライバシー権侵害などが代表例として挙げられます。

誹謗中傷はTwitterのリプライ、リツイート(RT)、ツイートや、Instagramにおけるコメント、投稿、ストーリーズ、YouTubeにおけるコメントや動画の投稿、5chにおける書き込みなど、様々な形態でなされます。

これらの誹謗中傷に対しては毅然とした対応をとることが必要であり、それがインフルエンサーを応援してくれているファンに対する礼儀であると考えられます。

誹謗中傷に対する対応としては、上記のような例において違法とされる投稿、コメント等に対し、裁判手続として発信者情報開示手続と呼ばれる方法を用いて投稿者を特定したり、問題とされる投稿、コメントをこれまた裁判手続として削除仮処分という方法を用いて削除するというものがあります。

これらの裁判手続は非常に専門的な知識・技術・経験が求められるものであると同時に、特に発信者情報開示手続においては契約者情報(=投稿者の情報)を保有しているプロバイダにおける情報保管のタイムリミット(ログ保存期限)が存在するため、非常にスピード感をもって対応に当たることが必要となります。

インターネット関連の法律、手続に精通している弁護士でなければ、このようなスピード感をもった対応をすることは極めて難しく、この分野に習熟した弁護士に依頼をすることが必要となります。

また、普段から顧問弁護士や頻繁に案件を依頼している弁護士のように、自社あるいは自らのインフルエンサー活動をよく理解している弁護士のほうが、背景事情をよくわかっており、裁判手続において背景事情を説明する際にも適切な対応をとることができます。

④企業案件に関する契約

インフルエンサーが企業等からいわゆる企業案件を獲得する場合には、企業案件の遂行に関して契約書が作成されることが多々あります。契約書の締結がないままでも、ダイレクトメッセージやメールのやりとりにより条件のすり合わせがなされることになります。

そのため、どのような条件が報酬発生の条件となるのか、具体的にはどのようなPRをすればいいのか何をしてはならないのか知的財産権や動画・投稿の権利の所在はどうなるのかどの程度の期間企業案件に用いた投稿や動画を優先表示しなければならないのかなど、ここでも法律的な問題が生じることになります。

したがって、契約書が存在する場合にそのチェックをすることはもちろん必要ですが、契約書が存在しない場合であっても、企業側とのやりとりのダイレクトメッセージやメールを弁護士にチェックしてもらい、それがどのような法律上の権利と義務を生じさせるものであるのかということを確認する必要があります。

⑤テレビ・他媒体出演契約

インフルエンサーとして活躍の場が広がりテレビや雑誌に出演することや、他のインフルエンサーとコラボして動画を制作・公開することがあります。インスタライブなどもその例ですね。

その際には、いかなる条件で出演するのか収益の取り分はどうするのか、動画自体の権利はどちらに帰属するのか第三者の権利侵害が生じた場合にはどのように対応するのかなど、企業案件とはまた異なる法律上の問題が生じることになります。

いずれの場合でも、業界慣習的には契約書というものは作成されませんが、条件のすり合わせ程度のやりとりはなされることになります。

例えばテレビ出演であれば、簡単にギャラの説明がなされ(なされないこともあります。)、出演承諾書という書面に一筆記入するだけということもありますが、必要な条件などがあればインフルエンサー側から明示することにより、承諾をもらえることがあります。

他のインフルエンサーとのコラボとなれば、収益の配分はどうするかというところについてはそんなに揉めない(半々の取り分であったり、それぞれのアカウントやチャンネルにそれぞれ投稿、動画をアップロードすることにより収入の分配は行わないなどのルールを定めることが多いです。)のですが、動画の著作権や肖像権、第三者からの権利侵害の主張に対する対応や、炎上した際の対応については別段の取り決めを置いておきたいものです。

このあたりの問題も、この分野に知見を有する弁護士であれば確認しておかねばならない事項等について的確なアドバイスをすることが可能であり、後の祭りとして取り返しのつかないことになる事態を避けることが可能となります。

⑥炎上対応

起きてはほしくないものですが、インフルエンサーとして活動する以上、常に炎上という事態が生じるリスクが存在します。

インフルエンサーに非があるかないかに関わらず、インターネットにおいて炎上した場合には簡単に鎮火しないこともあり、個人として何らかの声明文を公表したり謝罪動画を作成・公開したり事務所として対応方針について発表したりなど、初動だけでも様々なパターンが考えられます。

どのような声明を発表するのが効果的か、どのような対応をすることが炎上の解決に資するかなどは、過去の事例をよく把握し、経験と知識に基づいて選択しなければならないものです。行き当たりばったりの対応では、まさに火に油を注ぐが如く、炎上を加速させてしまう危険性があります。

そのため、炎上してしまった後でも再起を図り、インフルエンサーとして活動していくためには、失敗の許されない炎上対応をとらなければなりません。

その際には、炎上の原因を正確に分析し、その原因に対処するために法律上いかなる行動をするべきか、いかなる報告をするべきかということについて、上記のような経験と知識を有する者からのアドバイスが必要不可欠となります。

⑦その他各分野

ここまで解説・紹介したものがいわゆるインフルエンサー法務としての主たる分野となりますが、幅広い視点で見るならばこれらに限られない法律問題も当然存在します。

インフルエンサーに限られない法律問題、トラブルでいえば、自ら若しくは関係者が逮捕されてしまった場合の刑事弁護としての対応、男女トラブルや離婚問題、交通事故、相続トラブルなど、日頃から懇意にしている弁護士がいるならば気軽に相談や依頼ができるものもたくさん存在します。

当事務所でも、これらの問題に限られず、インフルエンサーやライバー、あるいはその事務所や会社と顧問契約を締結のうえで日々懇意にさせていただき、日常のトラブルからインフルエンサー法務まで幅広く対応している実績がございます。

インフルエンサーの今後

テレビという存在に追い付け追い越せで発達している各種SNSや動画共有サイト。これらのものが発達を続ける限り、インフルエンサーという存在もまた活躍の場を広げ、現在では想定されていない新たな法律トラブルや国による規制への対応というものが生じることとなるでしょう。

そうなった場合には、その段階で弁護士に依頼しても「どの弁護士がいいんだろう。」「知り合いの弁護士がいないから諦めようか。」などの悩みが生じてしまったり、あまりインフルエンサー法務に関する分野に精通していない弁護士に依頼をしてしまったがために、初動対応で失敗して取り返しのつかない事態に発展してしまうおそれがあります。

当事務所に限らず、インフルエンサーに対して法務サービスを提供している法律事務所や法人はいくつか存在しますが、インフルエンサーとしての自らのキャリア、将来性を考えたうえで、法務担当として弁護士と長い付き合いになることを見越すのであれば、専門性経験知識のほかに、気軽に連絡をとることができる人間的に相性がいいなと感じる弁護士を選ぶこともひとつのポイントとなるでしょう。

当事務所では、インフルエンサーやその所属事務所、あるいはYouTubeチャンネルの管理事務所などと顧問契約を多数締結しており、昨今のインフルエンサーを取り巻く環境についても日々知見を深めています。

顧問契約を締結いただいているクライアント様には、電話、メールによる連絡のほか、担当弁護士とLINEやChatwork、Slackなど各種メッセンジャーツールによるやりとりをしていただいており、スピーディかつ気軽な連絡をとれるという点で好評をいただいております。

インフルエンサーあるいはその所属事務所、コンサルティング会社様などからの初回相談は無料となっておりますので、インフルエンサー法務についてお悩みの方や、予防法務として今後の展開のために顧問弁護士をお考えの方は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。

この記事を書いた人

藤本 大和

ベンチャー企業を中心に、ビジネス適法性審査やスタートアップファイナンス、バイアウトなどについての深い知見を有する。IT関連企業や広告代理店などをクライアントとして擁しており、最新のビジネス情報や法改正についても日々研究を重ねている。

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